ネグレクト
この本は、2000年暮れに実際に起こった事件のルポです。
ネグレクト・・・・育児放棄
幼児虐待の事件が新聞に載ることも 少なくないこの頃ですが、ネグレクトもその一種。
虐待より目につき難いので、その分 早目に対処することは難しいのかもしれません。
2000年12月、3歳の真奈ちゃんが部屋の片隅に置かれたダンボールの中でミイラのようになって命を落としました。
両親は 当時21歳。
若い親だって、りっぱに育児をしている人も沢山いる。
何が原因で 放棄されなくてはいけなかったのか・・・・。
18歳で妊娠した当時は、若い夫婦は生まれてくるのを楽しみにしていたのに・・・。
いくつもの要因が重なって、追い込まれていったのだろうとは思う。
両親ともに 恵まれない子供時代を過ごしたことも、子供の育て方が分からなかった理由の一つかもしれない。
そして、近所との関わりを避けていたことも、保健婦さんの心配を断り続けたことも・・・。
弱い部分をさらけ出して 相談するという経験を持ち合わせておらず、一人で抱え込んでは諦める。
母親にとっては 八方塞りだったのかもしれない。
でも・・・・亡くなった幼児のことを思うと、逃げてばかりだったこの両親を 「この人たちも 苦しかったんだ。」とは 簡単には片付けられない。
文末の方に、やっと現実を受け入れ、更正していこうとするこの両親に対して 励ましの言葉が寄せられたことが書いてあった。
それらは、同じように 相談する人のいない母親からが多かったようだ。
育児の大変さは 私も身をもって知っている。
育児ノイローゼと言う言葉も 決して他人事とは思えない状態にもなったし。
実母や姑、先輩ママたちの助言ですら、素直に聞き入れることができなくて・・・。
そんなふうに母親がストレスを抱え込んでいると、子供は敏感に反応したりする。
と言うか、母親の気持ちにゆとりがないと、子供の何気ない所作もいちいち気にかかってしまうんだろうな・・・。
同じ年齢の子供を持つ親子のグループとの関わりも、ただ単に気晴らしになるわけでもない。
子供の発育の早さが気になるし、自分で「家の子はこれが遅い」と悩んでしまうと、何を言われてもバカにされたような気になったりもした。
それでも、外に出て愚痴の一つもこぼすことで、重いものを捨てることができた。
子供の寝顔や笑顔に どれだけ救われたことか。
子供を育てるのではなく、自分が子供達に親に育ててもらったような気がする。
まだまだ 成長過程ですが・・・(笑)
この母親は、自分も育児放棄をされた環境の中で育っている。
「それでも自分は死ななかった。」ことで、真奈ちゃんが何日も食べない状態でもまさか死んでしまうなどとは思わなかったのかもしれない。
医師も公的な機関も、思い当たる節はあったのに、虐待と違って外傷がないため、なかなか思い切って踏み込むことができなかった。
「もし あの時・・・」
この事件に関わった心ある人達は、きっと今でも悔やみきれない気持ちをもっているんだろうな。
もし 今、悩んでいる人がいるのなら、読んで、その状況からなんとしてでも抜け出して欲しいと思う。
だって 子供は親を選べないんだもの。